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【連載:現場目線で選ぶイメージセンサ 第2回】センサは決まったが動かない?通信方式とフレームレートに潜む「帯域の壁」

2026.07.01

OMNIVISION Technologies, Inc.
(オムニビジョン・テクノロジーズ)

はじめに

第2回:センサは決まったが動かない?通信方式とフレームレートに潜む「帯域の壁」

こんにちは。
加賀デバイスのOMNIVISION Teamです。

前回のコラムでは、「高画素数=高画質」というスペックの裏に隠された、センササイズや画素ピッチとのトレードオフについてお話ししました。さて、「今回の用途なら4K(約800万画素)だな」と無事にセンサを選び終えたところで、現場ではすぐに「第2の壁」が立ちはだかります。

それが、「この画像データを、どうやって後段デバイスまで運ぶのか?」という物理的なパイプの問題です。 今回は、スペック表に必ず記載されている『Frame Rate(フレームレート)』と『Interface(通信インターフェース)』にスポットを当て、カタログ通りにはいかない実務的な設計のポイントを解説します。

※OMNIVISION HP内のイメージセンサ製品リスト
 ・OMNIVISION Image Sensor Product

■「フレームレート」とデータ量の関係
 まずは言葉の定義から確認しましょう。スペック表にある「Frame Rate」とは、「イメージセンサが1秒間に何枚の画像(フレーム)を出力できるか」という指標です。 単位は「fps(frames per second)」で、60fpsであれば1秒間に60枚の静止画を連続して出力していることになります。 フレームレートの数値が大きいほうが、より滑らかな動画になるのは想像がつくかと思います。

図1:フレームレートの違い

なので、とりあえず数値が大きいほうが良いのではないかと思いがちですが、1秒間に送る画像が増えれば、当然データ量も増大します。データが重くなれば伝送のハードルは上がり、後段の処理負荷も高くなります。逆に言えば、用途として1fps(1秒に1枚)で十分であれば、ある程度画素数が大きくても余裕を持って送ることができるということです。皆さんもスマートフォンのカメラ等で、静止画だと非常に高画素で撮影可能だが、動画撮影だと画素数が減ってしまうという経験をしたことがあるかもしれませんが、上記の内容が一つの要因です。

また、むやみに高いfpsを出力しても、最終的に表示するモニタの更新頻度(一般的なモニタは60Hz)を超えてしまっては、システムの帯域を無駄に消費するだけになってしまいます。システム全体のバランスを見極め、ボトルネックがどこにあるかを確認することが重要です。

■隠れた重要パラメータ「ビット長」と出力フォーマット
 急に「ビット長」という単語が出てきて、戸惑われた方もいらっしゃるかもしれません。 ビット長とは、「1つの画素が持つ光のデータを何bitで表現するか」という分解能の指標です。例えば8bitなら256段階、16bitなら65536段階で光の強弱を表現でき、数字が大きいほど豊かな階調表現が可能になります。 ただし、ビット長が大きくなれば1画素あたりのデータ量が増えるので、全体のデータ量も増大します。やはりここでもデータ量と性能(画質)のトレードオフとなります。

しかし、OMNIVISIONのスペック表には「ビット長」という単独の項目はなく、戸惑われた方もいらっしゃるかもしれません。 実は、『Output Format(出力フォーマット)』の欄を確認する必要があります。ここに「8bit-RAW」や「12bit-RAW」という記載があれば、それがそのままビット長となります。

ただ、それ以外にも「YUV」などの形式もあります。YUVとは? RAWとは? なぜフォーマット毎にビット長が違うの? といった出力フォーマット自体の詳細やシステムへの影響については、また別の回でじっくり解説します。今回は「出力フォーマットによって1画素あたりのデータの重さ(=ビット長)が変わる」という点だけ押さえていただければ大丈夫です。

■帯域計算の基本:「積荷」と「スピード」
 映像データを送る仕組みは、よく「道路とトラック」に例えられます。いくら立派な積荷(高解像度)を、ものすごいスピード(高フレームレート)で運びたくても、道路(通信インターフェース)の幅が狭ければ、渋滞を起こしてシステムは破綻してしまいます。

システムが成立するかを確認するために、まずは「1秒間にどれくらいのデータを運ぶ必要があるのか(=必要帯域)」を算出します。また、必要帯域は単位[bps]で表されます。bpsはbit per secondの略で、1秒間に何bitのデータを伝送可能かという単位となっています。基本の計算式は以下の通りです。

有効画素数 × フレームレート(fps) × ビット長 = 必要帯域(bps)
(※ここでの有効画素数は1フレームあたりの総画素数です)
 
これは直感的にわかりやすいかと思います。 1枚の画像(解像度)に対して1画素ごとのデータ量(ビット長)を掛けることで、1枚の画像の総データ量が算出されます。さらにその画像を1秒間に何枚送るか(フレームレート)を掛けることで、1秒間に送るべきデータの総量が表されます。

例えば、 解像度:1920×1080(Full HD 2MP) フレームレート:60[fps] 出力フォーマット:8bit RAW(ビット長:8bit) の場合、理論上の必要帯域は以下のようになります。

1920 × 1080 × 60 × 8 = 995,328,000[bps] ≒ 1[Gbps]

・ ・ ・ ・ が、ここで非常に大事な注意事項があります。計算方法がわかったからもういいやとこの続きを読み飛ばすことのないよう、ぜひご注意ください。

例えば、上記の計算結果から2MP,8bit-RAW,60fpsであれば「1Gbps」の通信が可能な後段デバイスを選べばいいと思いがちですが、その場合は帯域不足で通信が不可能となり、あとからフレームレートもしくは解像度を下げる等の仕様変更、部品変更による基板の作り直し・・・等、多大な手戻りが発生することになります。ここは非常に慎重に検討されることをお勧めします。

図2:画像データの実際のデータ量と伝送データ量の関係イメージ

■通信方式の種類:DVPからMIPIへ
必要な帯域が見えたら、次はそのデータを運ぶための「通信インターフェース」選びです。今回は現在主流となっている「DVP」と「MIPI」について紹介します。

【DVPについて】
DVPは「Digital Video Port」の略で、古くから画像データの伝送に使われているパラレル伝送の通信方式です。
先ほど画像データのビット長について説明しましたが、この通信方式は「1bitにつき1本の線」を使って送ります。つまり、12bitのデータであれば12本のデータ線が必要です。さらに、データ読み取りのタイミングを合わせるための「基準クロック信号」や、画像の始まりと終わりを示す「同期信号(垂直方向、水平方向の2つ)」も必要となります。結果として、ビット数に応じて11本~18本程度の配線が必要になります。このように配線数が多く、基板の面積を占有してしまうため、カメラモジュールの小型化には不向きです。

また、複数の線を使って同時にデータを送る都合上、通信を高速化しようとすると「配線ごとの信号到達タイミングのズレ(スキュー)」が問題になります。複数の線のタイミングを正確に合わせるのが難しくなるため、あまり速いクロックでは通信ができません。そのため、通信帯域は数百Mbps程度にとどまり、高画素のイメージセンサでは使われず、主にVGA~1M(メガ)ピクセルクラスのセンサで使われています。同様の理由で長距離伝送にも不向きであり、あくまでも同一基板内のデバイス同士を近距離で接続する用途が想定されています。

一方で、プロトコル(通信の決まりごと)が非常に単純であるため、低コストのシステムでも受信回路を構築しやすいというメリットがあります。信号自体の解析もオシロスコープ等で容易に行え、特別なアナライザが不要である点も現場では扱いやすいポイントです。

図3:DVP信号の接続イメージ

【MIPIについて】
MIPIと一口に言っても実は様々な種類があります。「MIPI」自体は、この通信方式の規格を策定しているアライアンス(団体)の名称です。2026年現在、イメージセンサのスペック表に「MIPI」と記載されていれば、基本的には「MIPI CSI-2 D-PHY」と呼ばれる規格を指していることが主流です。
(※より高画素なセンサの場合は「C-PHY」と呼ばれる別の規格が採用されていることもあるため、正式な仕様はデータシートの確認が必要です)

ここでは、主流である「MIPI CSI-2 D-PHY」の概要を解説します。
まず用語の整理ですが、「CSI-2」と「D-PHY」はそれぞれ別の階層の役割を表しています。

CSI-2(Camera Serial Interface 2):
 データの中身(パケット)をどのように構成して入れるかというルールの規定です。

D-PHY:
 物理層(Physical layer)と呼ばれるもので、デバイス間を物理的にどう繋ぐか、どのような信号レベルやタイミングで送るかという規定です。

この2つの関係は、「紙の履歴書の送り方」で考えるとわかりやすいかもしれません。
「CSI-2」は、履歴書の書き方です。名前や経歴、志望動機など、どこに何を書くかがきちんと決まっています。名前欄に違う内容を書いたり、住所欄に志望動機を書いたりしたら、受け取った相手は情報を正しく読み取れません。それと同じで、画像データをどのような形式で構成して送るかという決め事がCSI-2です。

対して「D-PHY」は、その履歴書を物理的にどういう手段で届けるかという内容になります。電子メール、郵便、直接持っていく・・・など、どの手段を選ぶかで相手方に届く速度(伝送速度)が変わりますよね。しかし、手段(物理層)がどれであっても、中身である履歴書(CSI-2)のフォーマット自体は変わりません。このように、データの「中身のルール」と「運ぶ手段のルール」が独立して定義されているのです。

ここでは、伝送速度の観点から「運ぶ手段」であるD-PHYについて説明します。

【MIPI D-PHYについて】
D-PHYは、DVPのパラレル伝送に対する「シリアル伝送」の規格です。シリアル伝送といっても1本の線だけで送るわけではなく、2本1組の線(このペアを「1レーン」と呼びます)を用いてデータを送ります。この2本の線を使った「差動伝送」という方式を採用することで、外部からのノイズを打ち消すことができ、DVPよりもはるかに高速な通信が可能になっています。

構成としては、クロック信号用に1レーン、データ信号用に1〜4レーンを使用します。データ信号のレーン数が増えるほど、一度により多くのデータを送ることができます。そのため、必要とされるデータ帯域(解像度やフレームレート)に応じて、配線本数は「4本(データ1レーン + クロック1レーン)」から「10本(データ4レーン + クロック1レーン)」まで変動します。

図4:MIPI D-PHYの接続イメージ



D-PHYはDVPと比較して非常に高速な通信が可能ですが、その一方基板設計の難易度は格段に上がります。DVPは信号速度が比較的遅いため、多少の配線長さの違いや特性インピーダンスの乱れを無視しても動くことが多々ありましたが、MIPIはそうはいきません。以下の技術が必須となります。

差動インピーダンス制御: 信号の反射を防ぐため、差動ペアの配線において、所定のインピーダンス(一般的に100Ω)を厳密に維持する必要があります。

等長配線: 信号が到達するタイミングのズレ(スキュー)を極限まで抑えるため、各レーンの配線長をミリ単位で揃える高度な設計技術が要求されます。特にクロック信号とデータ信号の間のタイミング調整はシビアです。

物理的な配置の制約: 高速信号が通るため、ビア(配線を貫通させる穴)の数を減らす、ノイズ源から離す、コネクタ接続部での特性変化を抑えるなど、物理的な設計ノウハウが品質に直結します。

また、信号電圧の振幅を小さくして高速化を実現している反面、信号が減衰しやすく、伝送可能な距離は長くても数十センチ程度にとどまります。そのため、D-PHYもDVPと同様に基本的には同一基板内のデバイス同士の接続に使われます。

そのため、DVPもMIPI D-PHYも自動車のリアカメラのように数メートル先まで画像を伝送する必要がある場合、そのままケーブルで伸ばすことはできません。その場合は、SerDes等の長距離伝送用ICを使用して別の物理規格(LVDSなど)に変換する設計が不可欠です。

以下表に、今まで説明したDVPとMIPI D-PHYの特徴や用途についてまとめます。

表1:DVPとMIPI D-PHYの特徴

【その他の次世代規格】
MIPI C-PHY: OMNIVISION社製品でも採用が増えている規格です。D-PHYと異なり独立したクロック線を持たず、3本の線(トリオ)を1セットとして複雑な変調をかけることで、さらに少ないピン数で圧倒的な大容量通信を実現します。

MIPI A-PHY: 車載カメラなど、長距離伝送(最大15m程度)向けに策定された規格です。従来は独自のSerDes ICに頼っていた長距離通信を、MIPI規格として標準化したもので、ノイズ環境下での高い信頼性が特徴です。

■まとめ
イメージセンサの選定は、単に「画素数」や「フレームレート」を合わせるだけでは不十分です。通信インターフェースの帯域マージンや、基板設計の物理的な制約をクリアして初めて、センサの性能をフルに発揮することができます。

私たち加賀デバイスは、単なる代理店として部品を供給するだけでなく、システム全体の構成を見据えた技術商社としての知見を活かし、皆さまの開発を強力にサポートいたします。設計の初期段階からお声がけいただければ、手戻りのない最適なシステム設計のご提案が可能です。ぜひ、貴社のカメラ開発のパートナーとして、私たちにご相談ください。

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連載:現場目線で選ぶイメージセンサ ~第1回:「とりあえず高画素」の前に知っておきたい、画素数・センササイズ・画素サイズの『三角関係』

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