OMNIVISION

連載:現場目線で選ぶイメージセンサ ~第1回:「とりあえず高画素」の前に知っておきたい、画素数・センササイズ・画素サイズの『三角関係』

2026.06.03

OMNIVISION Technologies, Inc.
(オムニビジョン・テクノロジーズ)

はじめに

こんにちは。
加賀デバイスのOMNIVISION Teamです。

これまで当コラムでは、OMNIVISION社イメージセンサを搭載した製品情報の紹介などを中心にお届けしてきましたが、今回は少し趣向を変え、日頃の設計現場に寄り添ったテーマを取り上げます。

私たちの身の回りには、スマートフォン、ドライブレコーダー、防犯カメラ、さらには工場の自動化ロボットまで、驚くほど多くの「カメラ」が溢れています。そして、その「目」の役割を担っているのがイメージセンサです。

しかし、いざ自社製品にカメラを組み込もうとイメージセンサ選定を始めた際、
「解像度、感度、HDR、インターフェース……用語が多すぎて、何から手をつければいいのかわからない」
「スペック表の数字は立派だけど、実際に使ってみたら思っていた画像と違う……」
といった悩みに直面したことはないでしょうか?
カタログに並ぶ「高画素」「高感度」といった言葉だけでは、実は本当に最適なセンサは見えてきません。

そこで、イメージセンサの「スペックの正しい読み解き方」と「選定のツボ」を紐解く新連載をスタートすることにしました。
本コラムでは、OMNIVISION社のイメージセンサ製品リスト※1にあるスペック項目をヒントにしながら、実務で特に重要になるポイントをピックアップして解説していきます。

教科書通りの解説ではなく、現場でよくある失敗や、スペック表の行間に隠されたトレードオフの関係など、設計の現場に直結する生きた情報をお伝えしていく予定です。
これからカメラ設計を始める皆さんの「虎の巻」になれば幸いです。

※1:OMNIVISION HP内のイメージセンサ製品リスト
 ・OMNIVISION Image Sensor Product

第1回:「とりあえず高画素」の前に知っておきたい、画素数・センササイズ・画素サイズの『三角関係』

「とりあえず4K」はトラブルの元?
「今度の新製品、とりあえずカメラは4K(約800万画素)でいこう」 企画会議でそんな指示が飛ぶことがあるかもしれません。スマートフォンの高画素化に慣れた私たちは「画素数が多い=無条件で高性能」と考えがちです。
しかし、明確な目的なく高画素化を進めた結果、後段デバイスの処理性能が不足し、十分なフレームレートが出ない、あるいは発熱や消費電力の問題が顕在化する・・・等、設計のやり直しに繋がるケースは珍しくありません。

連載第1回となる今回は、スペック表の左側に並ぶ『Resolution』『Optical Format』『Pixel Size』の3つに注目します。これらを個別にではなく「セット」で理解することが、用途に合った最適なセンサ選定の第一歩となります。

■ まず押さえておきたい!「3つの基本用語」
カタログの数字が意味する「物理的な制約」を正しく把握するために、まずは基本用語の意味とその関係性を「雨水を貯めるグラウンドとバケツ」に例えて整理しておきましょう。

1. Resolution(画素数 / 解像度)
【本来の意味】
イメージセンサに敷き詰められた有効な画素(ピクセル)の総数です。
例えば、「1920×1080(約200万画素=2MP / 1080p)」「3840×2160(約800万画素=8MP / 4K)」のように表記され、映像の「細かさ・精細さ」を決定します。本章タイトルにある高画素というのは、このピクセルの総数が多い事を指しています。
【イメージ】
並べる「バケツの総数」。数が多いほど、「グラウンドのどこに・どれだけの雨が降ったか(=光の強弱)」をより細かく測ることができるため、細部までくっきりとした映像になります。

2. Optical Format(センササイズ / 光学サイズ)
【本来の意味】
センサが光を受け取る面(受光面)の広さを示す規格です。昔のビデオカメラの真空管の直径に由来する慣例で、「1/4インチ」「1/2.7インチ」といった単位で表記されます。このサイズに合わせて光を集めるレンズを選定します。
※注:基板に実装する部品の「パッケージ外形寸法」とは異なります。
【イメージ】
バケツを並べる「グラウンドの広さ」。広ければ、バケツの数を増やしやすく、また、バケツ一つ一つのサイズを大きくしやすくなります。

図1:センササイズのイメージ

3. Pixel Size(画素サイズ / 画素ピッチ)
【本来の意味】
1つ1つの画素の物理的な一辺の長さです。単位は「μm(マイクロメートル)」で表記されます(例:2.2μm、3.0μmなど)。この数値が大きいほど、1画素あたりの受光面積が広く光を集めやすくなるため、一般的には感度(暗所性能)が高くなります。一方で画素サイズが小さい場合、暗い環境ではノイズが目立ち実際の映像が荒く見えることがあります。
※回路設計やプロセス技術にも依存します。ここはOMNIVISION社が工夫を凝らしている部分なので、今後の連載で解説する予定です。
【イメージ】
光を受け止める1つ1つの「バケツの大きさ」。バケツが大きければ雨を受け止めやすくなる=感度が高くなります。

これらの3つのパラメータを簡易的に図示します(図2)。

図2:各パラメータの概念図

この3つは「グラウンドの広さ(センササイズ)を変えずに、バケツの数(画素数)を増やせば、必然的にバケツ1つの大きさ(画素サイズ)は小さくなる」という関係にあります。

図3:各パラメータの関係性イメージ

■ 1. 高画素がもたらす「圧倒的なメリット」
OMNIVISION社をはじめ、各社が高画素センサの開発にしのぎを削るのには明確な理由があります。
高画素化には、特定の用途においてシステム全体を劇的に進化させる力があるからです。例えば以下のようなメリットが存在します。

• 遠方の微小な対象物を捉える: 車載ADASにおける数十メートル先の道路標識や、監視カメラでの車のナンバープレートなど、遠くの小さな情報を正確に画像認識させるためには、高画素化が必須です。

• デジタルズームの実現: 4Kなどの超高画素数であれば、映像の一部を拡大(デジタルズーム)しても十分な鮮明さを保てます。これにより、首振り式の可動カメラを使わずに、1台の固定カメラで広範囲をカバーできるようになり、システム全体のコストや可動部の故障リスクを下げることができます。

以下に示す図4は画素数8MPと1MPの画像の例です。
全体の画像をこのサイズで見ると、正直大きな違いはないように思えます。
この例から、例えば小型のモニタで視認するなどの用途であれば高画素のセンサを無理に使用する必要がないことがわかります。

図4:画素数の違いによる見え方比較(全体)

次に、図5は同じ画像を拡大した画像です。8MPが後ろの線がはっきり見えるのに対して、1MPの画像では線や数字がつぶれてしまっていることがわかります。そのため、デジタルズームが必要な場合や、大画面で画像を視認するような用途であれば、高画素化のメリットが活きることがわかります。

図5:画素数の違いによる見え方比較(拡大図)

■ 2. 高画素化に伴う「物理的なハードル」
一方で、明確な目的を持たずに「とりあえず高画素」を選ぶと、設計において思わぬハードルに直面します。
以下、その例を挙げます。

• 暗所性能とのトレードオフ: センササイズが同じまま高画素化すると、画素サイズが小さくなります。光を少ししか受け取れない小さなバケツでは、夕暮れ時や暗い工場内でノイズが乗りやすくなります。

データ量の増大: 画素が多い分、画像データも巨大になります。データが巨大になると、いくつかの設計上の課題が発生します。例えば、画像データをどのように送信するか、処理するかという課題があります。データが大きいほど通信インターフェースの高速化が必要になり、コストや設計難易度が跳ね上がります。また、その画像を処理する後段デバイス(SoCなど)に高い処理性能が求められ、結果的に発熱や消費電力の増加、コスト増加に繋がります。
データ量の詳細な考え方は、今後この連載でも触れていく予定です。

• レンズの大型化: 画素サイズを小さくせずに高画素化するには、センササイズ自体を大きくするしかありません。しかし、センサが大きくなれば、それに合わせて光を集めるレンズも大きくなり製品自体のサイズアップ、ひいてはコストの増加にも繋がってしまいます。

■ 3. チェックすべき「選定のポイント」
「高画素」「画素サイズ」「センササイズ」。この3つは常にトレードオフです。選定に迷った際は、以下を自問自答してみてください。

• 「遠くの認識やズームが必要か?」 → Yesなら、高画素のメリットが活きます。

• 「暗い場所で使うか?」 → Yesなら、画素数を欲張るよりも、画素サイズが大きいものを選ぶのが安全です。

• 「誰が処理する?どう送る?」 → 後段デバイスとの通信方法はそのデータ量を送信可能か、特にイメージセンサと後段システムの間が長距離通信になる場合は要注意です。また、接続予定のSoCは、巨大なデータ量に耐えられるスペックを持っているか。

■ まとめ
ここまで説明したように、使用用途に応じて必要なスペックを検討し、使い分けることが重要です。高画素、画素サイズ大、センササイズ大の大型高画質高コストなイメージセンサ、低画素、画素サイズ小、センササイズ小の小型低画質低コストなイメージセンサ、どちらが良い悪いという話ではありません。
それでも、「遠くのものを鮮明に映したいから高画素が必要。でも、レンズサイズに制限があるから画素サイズは小さくなってしまう。この暗所性能の低下をどう補うか?」——実際の設計現場では、こういった悩みが必ず発生し、これらのトレードオフの中で最適解を探る作業が重要になります。

私たち加賀デバイスは、お客様の「実現したい用途」と「システム全体の制約」をヒアリングし、カタログの数字だけでは見えない最適なバランスをご提案します。イメージセンサの選定に迷ったら、まずは私たちにご相談ください。

※本記事はイメージセンサの一般的な特性を解説したものです。
最終的な画質・感度はレンズの光学性能や画像処理にも依存し、また用途によって求められる品質規格や適用製品が異なります。採用時には個別の仕様をご確認ください。

お問い合わせは以下からお願いします。
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