Bluetooth® Core 6.2 SCIで超低遅延通信を実現!
2026.09.17

こんにちは。
加賀デバイスのNordic Teamです。
Bluetooth® LEは、低消費電力でありながら高い接続性を実現する無線通信技術として、ウェアラブル機器、IoT機器、医療機器、産業機器など幅広い分野で採用されています。
その一方で、ゲーミングマウスやスタイラスペン、AR/VRコントローラーなど、より高いリアルタイム性が求められる用途では「通信遅延」が課題となるケースがありました。

こうした課題を解決するため、Bluetooth SIGはBluetooth Core Specification Version 6.2において、Bluetooth Shorter Connection Intervals(SCI) を新たに追加しました。
SCIはBluetooth LEの接続間隔を従来よりも大幅に短縮できる機能であり、より低遅延なBluetooth通信を実現するための重要な技術として注目されています。
本コラムではSCIの仕組みやメリット、想定されるアプリケーションについて解説するとともに、Nordicが提供するSCIソリューションについてご紹介します。
◢◤Bluetooth LEにおける接続間隔とは?
Bluetooth LEで接続されている機器同士は、常時通信を行っているわけではありません。
Central(スマートフォンやPCなど)とPeripheral(センサーやマウスなど)は、あらかじめ決められた周期で通信イベントを実行します。
この周期を接続間隔(Connection Interval)と呼びます。
例えば接続間隔が10msの場合、10msごとに通信機会が発生するので、新しいデータは次回の通信イベントで送受信されます。
つまり、早く次のデータを送りたくても最短で10ms後に送信することになります。
従来のBluetooth LEでは、この接続間隔の下限値は7.5msでした。
IoT機器や一般的なBluetooth周辺機器では十分な性能でしたが、より高速な応答性が求められる用途では、この7.5msという制限がボトルネックになる場合がありました。
◢◤SCI(Shorter Connection Intervals)とは?
SCIの追加により、Bluetooth LEの接続間隔を従来よりも短く設定できるようになります。
従来のBluetooth LEでは接続間隔の下限値は7.5msでしたが、SCIでは0.375msまで設定可能となりました。
ただし、実際にSCIを利用するためには「Central、Peripheral共にSCIに対応している」必要があります。
また、規格上0.375msが定義されているからといって、すべての機器で0.375msの接続間隔が利用できるわけではありません。
SCIでは新たに2つの接続間隔範囲が追加され、従来の接続間隔と合わせて3つのカテゴリに分類して定義しています。
| Value Range | 説明 | 最小間隔(ms) | 最大間隔(s) | 分解能(ms) |
|---|---|---|---|---|
| BCV (Baseline ConnInterval Values) | SCI未サポート時のデフォルト範囲(従来の範囲) | 7.5 | 4.0 | 1.25 |
| RCV (Rounded ConnInterval Values) | SCIサポート時の必須範囲 | 1.25 | 4.0 | 1.25 |
| ECV (Extended ConnInterval Values) | SCIサポート時の拡張範囲(Option) | 0.375 | 4.0 | 0.125 |

SCI対応機器はRCVを必ずサポートする必要があり、オプションとしてECV範囲までサポートできます。
◢◤SCIのもう一つの重要機能
Bluetooth Core 6.2では、SCI関連機能としてLE Flushable ACL Dataも導入されました。
従来のBluetooth LEのACL(Asynchronous Connection Less)リンクでは、送信に失敗したデータパケットは、相手側から受信完了(ACK)を受け取るまで強制的に再送を繰り返す仕様になっていました。
LE Flushable ACL Dataが導入されたことにより、ホストは特定のACLデータパケットを「破棄可能(Flushable)」としてマークできるようになりました。
つまり、これは「古くなったデータを送信せずに破棄できる」という仕組みです。
例えばゲーミングマウスの場合、
・マウス座標データを送信
・無線環境の影響で送信待ちが発生
・その間にさらに新しい座標データが生成される
という状況が発生します。
この場合、古い座標情報を送るよりも最新データを優先した方が、ユーザーはより自然な操作感を得られます。
LE Flushable ACL Dataでは不要になった古いデータを破棄できるため、
・レイテンシ低減
・応答性向上
・無線リソースの有効活用
が期待できます。
◢◤NordicのSCIソリューション
NordicはBluetooth Core 6.2のSCI標準化活動に積極的に参画しており、Bluetooth SIGよりSCIの相互接続性検証(IOP Validation)への貢献について表彰を受けています。
さらにNordicでは、nRF Connect SDKにてSCIをサポートしています。
SCIはnRF52シリーズ、nRF53シリーズ、nRF54シリーズのデバイスで利用できます。
ただし、Bluetooth Core 6.2では0.375msまでの接続間隔が定義されていますが、実際に利用可能な最小接続間隔はnRF Connect SDKのバージョンやデバイス性能によって異なります。
現在のサポート範囲は下記のようになっています。
※最小接続間隔実装条件:2Mbps PHY、サポートされている最小のACLフレームスペース、27バイトのデータ長
| NCS version | 3.4.0 | 3.3.x | 3.2.x | 3.1.1 |
|---|---|---|---|---|
| nRF52 series | 750us | 875us | 875us | No support |
| nRF53 series | 875us | 875us | 875us | No support |
| nRF54L series | 750us | 750us | 750us | No support |
◢◤NordicのSCIソリューション
Nordicでは、 SCIの動作を評価するためのサンプルアプリケーションをnRF Connect SDKで提供しています。
Bluetooth: Shorter Connection Intervals
このサンプルを利用することで、SCIによる接続間隔短縮と通信レイテンシの変化を実際のハードウェア上で確認できます。
■準備
・評価ボード×2台(nRF52840 DK、nRF5340 DK、nRF54L15 DK、nRF54LM20 DK)
・PC(シリアルターミナル表示用)

■準備
1.両方の評価ボード(以下DK)にSCIサンプルを書き込みます。
(サンプルのビルド/書き込み方法はnRF Connect SDK 環境構築方法(V3.0.0編)をご参照ください)
2.書き込み後、それぞれのUSBシリアルポートへ接続し、ターミナルを開きます。
起動すると以下のようなログが表示されます。

3.まず、接続間隔の更新を開始するDKを決めます。
どちらでもよいので一方に「y」、もう一方に「n」を入力します。
次に、2台のDKの一方をCentral(「c」を入力)、もう一方をPeripheral(「p」を入力)に設定します。

4.Central、Peripheralの設定が完了すると、2台のDKは自動的に接続し最小接続間隔を交換します。
Central DKのターミナル表示

Peripheral DKのターミナル表示

このサンプルソフトでは下記の接続間隔を周期的に繰り返し、設定された接続間隔での実際の送信レイテンシを表示します。
・両方のデバイスでサポートされる最小接続間隔(nRF54L15では750us)
・1ms
・1.25ms
・2ms
・4ms
是非ご活用ください。
◢◤まとめ
Bluetooth Shorter Connection Intervals(SCI)は、Bluetooth Core 6.2で導入された新機能であり、Bluetooth LEの接続間隔を従来の7.5msから最短375μsまで拡張可能にする技術です。
またSCIにはLE Flushable ACL Dataも含まれており、不要になった古いデータの送信を抑制することで、応答性向上にも貢献します。
Nordic はSCI標準化に深く関与するとともに、nRF Connect SDKでSCI機能を実装しています。
さらにnRF52、nRF53、nRF54LシリーズでSCIを利用できる環境を提供しており、次世代Bluetooth LEアプリケーションの開発を支援しています。
SCIは、ゲーミングデバイス、スタイラスペン、AR/VR機器、産業用HMI、高速センサーデバイスなどにおいて、Bluetooth LEの新たな可能性を切り開く技術として今後ますます注目されるでしょう。
NordicのSCIついて詳しい情報をお求めの方は弊社のお問い合わせ にご連絡ください。
今後もNordicの紹介及びコラムにて色々な情報を公開致しますので是非ご確認ください。
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