【連載:現場目線で選ぶイメージセンサ 第2回】センサは決まったが動かない?通信方式とフレームレートに潜む「帯域の壁」

OMNIVISION Technologies, Inc.(オムニビジョン・テクノロジーズ) はじめに 第2回:センサは決まったが動かない?通信方式とフレームレートに潜む「帯域の壁」 こんにちは。加賀デバイスのOMNIVISION Teamです。 前回のコラムでは、「高画素数=高画質」というスペックの裏に隠された、センササイズや画素ピッチとのトレードオフについてお話ししました。さて、「今回の用途なら4K(約800万画素)だな」と無事にセンサを選び終えたところで、現場ではすぐに「第2の壁」が立ちはだかります。 それが、「この画像データを、どうやって後段デバイスまで運ぶのか?」という物理的なパイプの問題です。 今回は、スペック表に必ず記載されている『Frame Rate(フレームレート)』と『Interface(通信インターフェース)』にスポットを当て、カタログ通りにはいかない実務的な設計のポイントを解説します。 ※OMNIVISION HP内のイメージセンサ製品リスト ・OMNIVISION Image Sensor Product ■「フレームレート」とデータ量の関係 まずは言葉の定義から確認しましょう。スペック表にある「Frame Rate」とは、「イメージセンサが1秒間に何枚の画像(フレーム)を出力できるか」という指標です。 単位は「fps(frames per second)」で、60fpsであれば1秒間に60枚の静止画を連続して出力していることになります。 フレームレートの数値が大きいほうが、より滑らかな動画になるのは想像がつくかと思います。 図1:フレームレートの違い なので、とりあえず数値が大きいほうが良いのではないかと思いがちですが、1秒間に送る画像が増えれば、当然データ量も増大します。データが重くなれば伝送のハードルは上がり、後段の処理負荷も高くなります。逆に言えば、用途として1fps(1秒に1枚)で十分であれば、ある程度画素数が大きくても余裕を持って送ることができるということです。皆さんもスマートフォンのカメラ等で、静止画だと非常に高画素で撮影可能だが、動画撮影だと画素数が減ってしまうという経験をしたことがあるかもしれませんが、上記の内容が一つの要因です。 また、むやみに高いfpsを出力しても、最終的に表示するモニタの更新頻度(一般的なモニタは60Hz)を超えてしまっては、システムの帯域を無駄に消費するだけになってしまいます。システム全体のバランスを見極め、ボトルネックがどこにあるかを確認することが重要です。 ■隠れた重要パラメータ「ビット長」と出力フォーマット 急に「ビット長」という単語が出てきて、戸惑われた方もいらっしゃるかもしれません。 ビット長とは、「1つの画素が持つ光のデータを何bitで表現するか」という分解能の指標です。例えば8bitなら256段階、16bitなら65536段階で光の強弱を表現でき、数字が大きいほど豊かな階調表現が可能になります。 ただし、ビット長が大きくなれば1画素あたりのデータ量が増えるので、全体のデータ量も増大します。やはりここでもデータ量と性能(画質)のトレードオフとなります。 しかし、OMNIVISIONのスペック表には「ビット長」という単独の項目はなく、戸惑われた方もいらっしゃるかもしれません。 実は、『Output Format(出力フォーマット)』の欄を確認する必要があります。ここに「8bit-RAW」や「12bit-RAW」という記載があれば、それがそのままビット長となります。 ただ、それ以外にも「YUV」などの形式もあります。YUVとは? RAWとは? なぜフォーマット毎にビット長が違うの? といった出力フォーマット自体の詳細やシステムへの影響については、また別の回でじっくり解説します。今回は「出力フォーマットによって1画素あたりのデータの重さ(=ビット長)が変わる」という点だけ押さえていただければ大丈夫です。 ■帯域計算の基本:「積荷」と「スピード」 映像データを送る仕組みは、よく「道路とトラック」に例えられます。いくら立派な積荷(高解像度)を、ものすごいスピード(高フレームレート)で運びたくても、道路(通信インターフェース)の幅が狭ければ、渋滞を起こしてシステムは破綻してしまいます。 システムが成立するかを確認するために、まずは「1秒間にどれくらいのデータを運ぶ必要があるのか(=必要帯域)」を算出します。また、必要帯域は単位[bps]で表されます。bpsはbit per secondの略で、1秒間に何bitのデータを伝送可能かという単位となっています。基本の計算式は以下の通りです。 有効画素数 × フレームレート(fps) × ビット長 = 必要帯域(bps)(※ここでの有効画素数は1フレームあたりの総画素数です) これは直感的にわかりやすいかと思います。 1枚の画像(解像度)に対して1画素ごとのデータ量(ビット長)を掛けることで、1枚の画像の総データ量が算出されます。さらにその画像を1秒間に何枚送るか(フレームレート)を掛けることで、1秒間に送るべきデータの総量が表されます。 例えば、 解像度:1920×1080(Full HD 2MP) フレームレート:60[fps] 出力フォーマット:8bit RAW(ビット長:8bit) の場合、理論上の必要帯域は以下のようになります。…

連載:現場目線で選ぶイメージセンサ ~第1回:「とりあえず高画素」の前に知っておきたい、画素数・センササイズ・画素サイズの『三角関係』

OMNIVISION Technologies, Inc.(オムニビジョン・テクノロジーズ) はじめに こんにちは。加賀デバイスのOMNIVISION Teamです。 これまで当コラムでは、OMNIVISION社イメージセンサを搭載した製品情報の紹介などを中心にお届けしてきましたが、今回は少し趣向を変え、日頃の設計現場に寄り添ったテーマを取り上げます。 私たちの身の回りには、スマートフォン、ドライブレコーダー、防犯カメラ、さらには工場の自動化ロボットまで、驚くほど多くの「カメラ」が溢れています。そして、その「目」の役割を担っているのがイメージセンサです。 しかし、いざ自社製品にカメラを組み込もうとイメージセンサ選定を始めた際、「解像度、感度、HDR、インターフェース……用語が多すぎて、何から手をつければいいのかわからない」「スペック表の数字は立派だけど、実際に使ってみたら思っていた画像と違う……」といった悩みに直面したことはないでしょうか?カタログに並ぶ「高画素」「高感度」といった言葉だけでは、実は本当に最適なセンサは見えてきません。 そこで、イメージセンサの「スペックの正しい読み解き方」と「選定のツボ」を紐解く新連載をスタートすることにしました。本コラムでは、OMNIVISION社のイメージセンサ製品リスト※1にあるスペック項目をヒントにしながら、実務で特に重要になるポイントをピックアップして解説していきます。 教科書通りの解説ではなく、現場でよくある失敗や、スペック表の行間に隠されたトレードオフの関係など、設計の現場に直結する生きた情報をお伝えしていく予定です。これからカメラ設計を始める皆さんの「虎の巻」になれば幸いです。 ※1:OMNIVISION HP内のイメージセンサ製品リスト ・OMNIVISION Image Sensor Product 第1回:「とりあえず高画素」の前に知っておきたい、画素数・センササイズ・画素サイズの『三角関係』 ■「とりあえず4K」はトラブルの元?「今度の新製品、とりあえずカメラは4K(約800万画素)でいこう」 企画会議でそんな指示が飛ぶことがあるかもしれません。スマートフォンの高画素化に慣れた私たちは「画素数が多い=無条件で高性能」と考えがちです。しかし、明確な目的なく高画素化を進めた結果、後段デバイスの処理性能が不足し、十分なフレームレートが出ない、あるいは発熱や消費電力の問題が顕在化する・・・等、設計のやり直しに繋がるケースは珍しくありません。 連載第1回となる今回は、スペック表の左側に並ぶ『Resolution』『Optical Format』『Pixel Size』の3つに注目します。これらを個別にではなく「セット」で理解することが、用途に合った最適なセンサ選定の第一歩となります。 ■ まず押さえておきたい!「3つの基本用語」カタログの数字が意味する「物理的な制約」を正しく把握するために、まずは基本用語の意味とその関係性を「雨水を貯めるグラウンドとバケツ」に例えて整理しておきましょう。 1. Resolution(画素数 / 解像度)【本来の意味】 イメージセンサに敷き詰められた有効な画素(ピクセル)の総数です。例えば、「1920×1080(約200万画素=2MP / 1080p)」「3840×2160(約800万画素=8MP / 4K)」のように表記され、映像の「細かさ・精細さ」を決定します。本章タイトルにある高画素というのは、このピクセルの総数が多い事を指しています。 【イメージ】並べる「バケツの総数」。数が多いほど、「グラウンドのどこに・どれだけの雨が降ったか(=光の強弱)」をより細かく測ることができるため、細部までくっきりとした映像になります。 2. Optical Format(センササイズ / 光学サイズ)【本来の意味】 センサが光を受け取る面(受光面)の広さを示す規格です。昔のビデオカメラの真空管の直径に由来する慣例で、「1/4インチ」「1/2.7インチ」といった単位で表記されます。このサイズに合わせて光を集めるレンズを選定します。※注:基板に実装する部品の「パッケージ外形寸法」とは異なります。 【イメージ】 バケツを並べる「グラウンドの広さ」。広ければ、バケツの数を増やしやすく、また、バケツ一つ一つのサイズを大きくしやすくなります。 図1:センササイズのイメージ 3. Pixel Size(画素サイズ / 画素ピッチ)【本来の意味】1つ1つの画素の物理的な一辺の長さです。単位は「μm(マイクロメートル)」で表記されます(例:2.2μm、3.0μmなど)。この数値が大きいほど、1画素あたりの受光面積が広く光を集めやすくなるため、一般的※には感度(暗所性能)が高くなります。一方で画素サイズが小さい場合、暗い環境ではノイズが目立ち実際の映像が荒く見えることがあります。※回路設計やプロセス技術にも依存します。ここはOMNIVISION社が工夫を凝らしている部分なので、今後の連載で解説する予定です。【イメージ】 光を受け止める1つ1つの「バケツの大きさ」。バケツが大きければ雨を受け止めやすくなる=感度が高くなります。 これらの3つのパラメータを簡易的に図示します(図2)。 図2:各パラメータの概念図 この3つは「グラウンドの広さ(センササイズ)を変えずに、バケツの数(画素数)を増やせば、必然的にバケツ1つの大きさ(画素サイズ)は小さくなる」という関係にあります。 図3:各パラメータの関係性イメージ ■ 1….